旅人からもらった本



なにかの拍子にその話題になり、「もう読み終わったから」と旅人から文庫本をもらった。
「荷物も軽くなるしね」と手渡され、私はどきどきしながら受け取った。
こんなやり取り、久しぶりだ。




その気になればいくらでもできるのかもしれないが、気持ちに余裕が持てる時期がとても狭められ、あまり旅に出かけなくなった。
いつぐらいからだろう、本が読めなくなった。
だから、それまでは「どの本を旅のお供にしようか」と用意していたのに、それもしなくなった。
あとは、ひとりでさまよう旅をしなくなったせいかもしれない。

旅先で人に会い、一人でいる時間は移動のときだけで、大体がそこで爆睡している。


なので、本を持たなくなったから誰かと本のやり取りをすることもなくなってしまった。

人から本をもらうと、その人のかけらを眺める感じがする。
「こういうことに関心を持ってるのか」と思うと、これまた面白い。
中には自分に合わないものもあって、途中で読むのを止めることもあるけれど、それも面白く思う。

自分もまた、読み終わった本を誰かにあげることがある。

こうやってじゅんぐりじゅんぐり本が旅をするのも好き。


どこかのカフェで、いらなくなった本を自由にやりとりできるカゴを設置していたところがあった。
海外の観光客も利用するので、日本語の本だけではないし、分厚い異国の言葉のガイドブックやペーパーバックもあった。
必要な人がそれを持ち去り、不要になった人が置いていく。

そんなのを眺めているのが好き。



日常生活をしているのに、いつもどこかで自分はさまよっていて、旅人同士のやり取りを見るのが好きなんだ。








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