母の彼シャツ




父が亡くなって3年以上経つ。
彼を失くしてから、母は冬に父の服を着るようになった。


最後は寝たきりになってしまった父に「風邪をひかさないように」と暖かい服を着せ、レッグウォーマーや分厚い靴下をはかせた。
自分で身体を動かさない父の手足は冷えやすかった。
マッサージをしてやるのだと、母は父の手足を毎日さすった。


そんな父の暖かい服を母は防寒のためだと着こむ。
「おじさん向き」の服が彼女に似合うわけがないが、私は黙ってそれを見ていた。



「ああ、もしかしてこれって彼シャツ?」
と、私が思ったのはつい2,3日前のこと。
洗濯された母が着ている父の服を干したときだった。

本人にはそんなつもりはなく、それを着たからといって世間で言われる「ぶかぶかの彼のシャツを着るかわいい感じ」は全然ないのだけれど、もしかして無意識に母の中の乙女心が働いているんじゃないか。

なんて夢見がちな娘は想像した。








コメント