綺麗な人



東京の地下鉄で、綺麗な男の人を見た。
「美人」というのではなく、自分を丁寧に手入れし、綺麗に見えるように努力をしている感じ。

遠目でよくわからなかったけど、うっすら化粧をしていたかもしれない。
唇がマットな赤だった。
鎖骨が見えるVネックのシャツを着て、繊細でゴージャスなネックレスをつけていた。
彼によく似合っていた。
下ははき古されたジーンズに、ハードなブーツ。
男の匂いも女の匂いもするような、不思議な人だった。


彼を見て、私は「ああ、ここは東京だな」と感じた。
広島で彼のように個がくっきりはっきりした人を滅多に見ない。
そんなことをすれば「悪目立ち」するから、個をはっきり見せようとしないのか、そもそも見せようとする気がないのか。

私は「もっと見せればいいのに」と思うけど、私自身が個をそんなにはっきり出しているのかと問われると口ごもってしまう。
地下鉄で出会った彼のように自分を磨いてもおらず、個も確立していない。


他にも東京では、フランスのマダムのような人や奇抜な人を見た。
そして、「こんなに大勢の中で『個』を見せて勝負するのは大変だな」と思った。
沢山いる、力を持った人たちだらけ。
広島なら、ちょっと何かすればすぐに目立ちそうだ。
一瞬かもしれないけど。


そんなことを感じながら、迷子になったり、寄り道をしたりしながら東京の街を歩いていた。






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