失恋ピアス



私がピアスホールを開けたのは、二十歳のとき。
長年思いを秘めていた人に、ここは踏ん切りをつけるためにきちんとふっていただこうと、ふられるのを承知で、相手も断るのは前提で、とにかくわかっているから言わせてほしいしばっさり断って
ほしい、という状況で告白をし、あっという間に終わってしまった。

ほんとはその直後にピアスホールが開けたかった。
ほら、失恋したらちょっぴり自分をいじめたくなるじゃない。
そんな感じで。

でもすぐに開けなかったのは、せっかくならもうちょっと自分に刻み込んでやろうと、その人の誕生日が1か月後だったので、そこまで待った。
今の私なら、待たない。


私の耳たぶは薄くて狭いので、イアリングはことごとく落としてきた。
ピアスがしたかった。
そのとき大好きだったマンガの主人公はルビーのピアスをしていたし、
ちょっとイッちゃってるヤツは自分の血液入りのピアスを思い人にはめていた。

母親は反対したけれど、「二十歳過ぎたら一人前」、というか、自分のことは自分で決めるように言っていたので、「開けるなら病院でしてくれ」と告げた。
その後、ピアスをしたら婦人科の病気になりやすい、失明したなどの怖い情報を私に提供してくれたけど、私は聞かなかった。


ピアス、ってプリミティヴな感じがして。
縄文弥生の頃の血が騒ぐ。
通過儀礼として、身体を傷つける習慣があるけれど、そんな感じ。


その人の誕生日、「ピアスホールを開けるならココ」と有名な病院に行き、薄紫の水性ペンで位置を決めてピストルタイプのでぱちんと開けた。
看護師さんは耳たぶのきわきわに開けたかったらしいけど、私はそれは怖くて、もうちょっと上のほうにしてもらった。

消毒液と化膿止めをもらい、私はそのまま映画を見に行った。
どうしてその映画を見たのかわからないけど、韓国映画の時代物で、内容はハードだった。
種女、と呼ばれる、金持ちに子どもが生まれなかったときに代理で出産する、地位の低い女性が主人公で、彼女の母親も種女だった。
彼女たちは男子を産めばそれなりにお金がもらえたが、女子を産むとひどい体罰を受け、二度と種女として働くことができなかった。
種女のコミュニティーで育った主人公は、種女としてあるお金持ちの代理出産をすることになるが、まぁ、そこのご主人とセックスしなくてはならないわけで、ご主人もツンツンして妊娠できないことで情緒不安定でヒステリックな妻より、瑞々しくてちょっと野性的な主人公にハマっていく。主人公もハマっていき、無事に男子を出産するが、ご主人と関係が続けられるわけもなく、二人の間の子どもも奪われ、失意の元命を絶つ。という悲劇だった。

ずきずきと頭痛がする中、そんな映画を見て、へとへとになってその日は終わったような気がする。



今の仕事はピアスは禁止されていないけれど、なんとなくいい顔はされなかった。
まだ古い体質が残っていて、「ピアス」に対する嫌悪感を持った人が最初の上司だったせいかもしれない。
そのあとは、とにかくアクセサリーをしていると危険、という状況になったので何一つはめていかなかった。

今年、正月休みが明けてから、私はこっそりピアスをして出勤している。
異動もあり、上司も変わった。
多分、怒られることはないと思う。


私の中で、ピアスはプリミティヴで反抗の印で、なにかセクシャルな香りのするものなのかも。
ピアスをして仕事をしていると、いつもよりちょっぴり「自分が女性である」と強く感じるもの。
スカートをはいた時と似たような効果ね。




■ピアスの前の物語

この物語には、前があるのです。

[投稿] ダーマトグラフのアンダーライン #Notebookers - Kyri*ate





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